まち劇インタビュー集

写真:太田原由明

太田原由明

 24年間務めた戸田書店が閉店になって、自分の書店を開きました。書店が減ってゆくのに抗いたいと思って。それに自分が得意なことは、本を選び、棚を作ることだと思いましたから。

 初期投資は大きいし、成功する見込みもない。当然妻は大反対です。でも、借金して物件を借りて既成事実を徐々に積み上げて。開店し、それなりに町に必要とされてるのを見て、妻も受け入れてくれました。そもそも妻も本好きで、2人の出会いも書店ですし。今はまだ全然利益を出せてないですが。

 10代の頃は、1日3冊のペースで読んでた時期もあります。図書館、書店、古本屋を巡る毎日で、中3の時にはドストエフスキーに夢中でした。良い本は触っただけでわかる時があるんです。作家や編集者や装丁家の「良い本にしたい」って想いが、ちゃんと伝わってきますから。

 今、この店には一万冊くらいあるんですが、一万冊って人が一生で読める量なんです。全て僕が自分で選んだ本です。普通の書店だと、マーケティングや売れ行きの結果とかで誰かが決めた本が送られてきて、店員はそれを並べるだけのこともあります。でも、八百屋も魚屋も食材は自分で選ぶじゃないですか。この書店では、商売としてあたり前のことをしてるつもりです。あと、ギャラリーもあって、本に関連した展示やイベントもやりますし、美味しいカフェとケーキもあります。

 本には、1冊1冊に違う世界が詰まっていて、ネットと違い、ゆっくりだけど、時を超え、広く伝わってゆく。2000年前の人の言葉に共感できる奥行きと広がりがある。書店の棚には数え切れないほどの世界が詰まってるんです。ひばりブックスに来たら、自分の直感を信じて本を手に取ってほしい。僕が自信をもってオススメできる本だけが並んでますので。ハズレはないです。
 その本があなたの世界を広げるきっかけになってほしいと願ってます。
2022年取材

一問一答太田原由明

  • 今日の朝食

    知久屋のお弁当

  • 一緒に住んでいる人

  • 最近好きな作品

    映画「ドライブ・マイ・カー」

  • 静岡を色に喩えると

    青と緑