まち劇インタビュー集

写真:杉山夫妻(杉山利光・妙美)居酒屋店主

杉山夫妻(杉山利光・妙美)居酒屋店主

 何人もいる兄弟に、腹いっぱい寿司を食わせてやりたかったんだよね。それで15才の時に魚業界に入った。あれから37年、「香魚」を始めて23年。大変な時期だらけだったけど、市場で魚を選ぶ時も、料理する時も、いつも誰かしら、お客さんの顔を思い浮かべているよね。あの人がこの魚を好きだったなあと思って、仕入れたり、料理してますよ。お客さんと料理人が人としてつながってることが大事だから。

 魚もね、同じ魚は一匹もいない。一期一会だよ。だから、魚をとことん食い尽くしてあげたいんだよね。だから、誰もが捨てちゃう部位も使う。魚を開拓する。魚食の文化をもっと育てたいし。手がかかって自分が休む時間がなくても仕方ないね。けど、それだけじゃなくて、美味しいものを手頃な値段で出したいんだよね。変わった部位を調理して出して儲けが出れば、メニュー全体の値段を安くできるじゃない。やっぱ、自分にとって一番の報酬は、お金じゃなくて、お客さんの「美味しい顔」だからね。

 去年、ガンになって、余命2ヶ月って言われたけど、薬が効いてるようで、まだやれてる。この前、なじみのお客さんが、ボロボロのお守りをくれたんだよね。このお守りを持った人は、みんなガンが治ったからって。ありがたいよ。自分もちゃんと治して、このお守りを次の人に渡せるようにしたいね。

 次男坊が「会社辞めて跡を継ぎたい」って言ってくれたのは嬉しかったけど、1から教える時間はもうないし、今いるお客さんに割く時間を大事にしたい。そもそも継ぐことはできないし。息子が継いで、「香魚」って看板は残っても、それは「香魚」じゃない。女房と二人で「香魚」だし、どっちかが欠けても「香魚」じゃない。オレは好きでやっただけだから、オレの代で終わらせるよ。
2021年取材

一問一答杉山夫妻

  • 今日の朝食

    妻が作った、大根の味噌汁、ホウレンソウ 手作りの味噌、春野菜のキャベツと鶏肉のバター炒め、シャウエッセン

  • 一緒に住んでいる人

    女房、長男夫婦、孫2人、(女房の)母

  • 好きな本

    「村上海賊の娘」、歴史もの全般、推理小説

  • 好きな映画、ドラマ、舞台

    NHK大河ドラマは欠かさず見てます。「真田丸」がベスト。

  • 最近聞いてる音楽

    KING GNU

  • 静岡を色に喩えると

    ブルーからグリーンに変わるグラデーション、黄緑色かな

  • 静岡を漢字一文字で表すと

    狭 町自体も狭い、人と人の距離も近い。けど魅力の一つ。

  • 静岡に初めて来た人をどこに連れていきますか

    温泉、梅ヶ島温泉あたり

  • 静岡の全市民に見て欲しいもの

    東日本大震災関連のコンテンツ

  • 今、一番感謝を伝えたい人は

    女房とお客様

  • 今、一番大事にしている言葉は

    感謝あるのみ。魚にも、人にも、すべてに。