まち劇インタビュー集

写真:しりあがり寿

自称漫画家、スウィートネガティブしりあがり寿

 静岡って、いつもお風呂に入ってるような所なんですよ。いつでも、銭湯の壁の絵みたく、背景に富士山があるし。居心地はいいんです。人も、やさしくていい人たちなんです。けど、割と人の顔を見てるのかなってとこもある気がします。静岡で面白いモノを創るには「荒れ狂う美味しそうな牛」みたいな人が必要じゃないかと。「我」を通す人がいないと。静岡で生まれ育った人の「我」がないと。企画書からは文化はできないですよ。企画書に書かれてるような「儲かる」、「人を集める」ってことよりも、大事なことは「やりたい」って気持ちじゃないですか。

 36才まで会社員と漫画家、二足のわらじでした。でも、転勤になりそうだったし、いずれ中間管理職になるだろうし、このままだと描きたいモノが描けなくなると思って、自分で自分をリストラしたんです。最近のテーマは「劣化」です。しょうがない劣化ってあるじゃないですか。それを愛でる方法を考えてます。

 キラキラ、ツルツルしたモノって、ウソっぽく感じますね。「この世にあってはならないモノ」って感じがします。人間が無理してるなって。そういうモノを作るのは凄いとも思いますが、それを作って威張ってるヤツは嫌ですね。だから、漫画を描きながらも「これはただの漫画なんだよ」ってことを作品に入れたくなるんです。「たかが漫画だ」って。それが風通しがいいと感じるんですよね。

 60を前にして山登りを始めて、マレーシアのキナバル山にも登ったんです。それは下りた後のビールを飲むのが楽しみで。昔、舞台もやりました。終わった直後のビールが楽しみで。文化祭みたいのが好きなんです。漫画家には打ち上げがないですし、ビールは乾いてる時に飲まなきゃしょうがない。
 人生は観光旅行だって思うんですよ。「どっか」からやってきて、子育て体験ツアーもやった、漫画家になる体験ツアーもやった、会社を運営する体験ツアーもやった、観光旅行としては充実してたなと。でも、観光旅行だからこそ、まだ色々行きたいとこがあって、そうすると欲が出てくるんですよ。今からまだまだ、自分探しですね。
2021年取材

一問一答しりあがり寿

  • 今日の朝食

    妻が買ってきた、とろろそばと昨夜の残りのお肉

  • 一緒に住んでいる人

    妻、子ども2人

  • 最近読んだ本

    「鬼滅の刃」は10巻くらいまで読みました

  • 最近見た映画、ドラマ、舞台

    深田晃司監督「本気のしるし」

  • 最近聞いてる音楽

    ザ・バンドあたりの昔の音楽

  • 静岡を色に喩えると

  • 静岡を漢字一文字で表すと

    「緩い」と見間違えてる「暖」

  • 静岡に初めて来た人をどこに連れていきますか

    おでん横町

  • 静岡の全市民に見て欲しいもの

    自分の作品では「真夜中の弥次さん喜多さん」

  • 今、一番感謝を伝えたい人は

    会社、家庭、実家、自分の大切なものを持たせてくれる人たち

  • 今、一番大事にしている言葉は

    健康と平和