まち劇インタビュー集

写真:萩原夫妻(萩原知令・綾乃)「萩錦酒造」代表

萩原夫妻(萩原知令・綾乃)「萩錦酒造」代表

綾乃さん
 実家の酒蔵を継ぐ前、6年前までは神奈川で、女子美術大学の助手の仕事をしてました。大学時代、油絵の専攻だったので、仕事の傍ら、作品発表したり、アートプロジェクトの活動もしてて、地方のアートイベントに参加もしてたんです。けど、この活動ではなかなか継続性が生まれない。ちゃんと場を創り、人と人をつなぐとこからきっちりはじめないと。自分にとって酒造りならば、それが可能で、継続性があると思って、酒蔵を継ぎました。芸術活動の延長って意識はありますね。

 酒造りは体力勝負のところもあって、子どもも生まれたばかりでなかなか大変なんですが、ラベルにも力を注いでゆきたいです。今はラベルの絵を美大時代の友人に頼んでます。ラベルの印象で味わいが広がると思うんですよ。日常にささやかな豊かさがあるといいなって。食卓の上にさらっと置いてあるのがいい。すんなり生活に入るのがいい。

 若い人のお酒離れが進んでますが、提案の仕方次第かなって。日本酒をたくさん飲む人を増やすよりも、ずっと永く飲んでくれる人を増やしたいですね。酒造りは、いつまでも理想は完成しないし、答えもない。「造る」っていうより、お酒が出来上がるのを「手助け」してる感じです。子育てみたいですね。仮に上手くできなくても、うちの子は可愛いみたいなとこもありますし。子育て同様、今も酒造りに、毎日、いちいち感動してます。

知令さん
 きっと僕は「ものをつくること」に関わりたいんです。
 建築関係の仕事で設計をやってたんですが、妻の実家の酒造りを手伝うようになって。当時は、平日は仕事、金曜の夜に静岡に来て酒造りを手伝って、月曜の朝に仕事に戻るハードな生活をしてましたけど、充実してました。自分の1つの面が職場にあるとして、酒造りは全く別の自分になる時間だったんです。それは自分らしく生きることにとても効果があったって思います。

 小田島さんっていう凄く魅力的な杜氏さんがいて、酒造りだけじゃなく、色んな道具も自分で修理したりして、作ることが身近なんです。それに、杜氏さんは調和をとる係なんですよ。何人もいるチームの人間関係、仕事のバランスなど考えて、楽しく作業できる場を作る人なんです。仕事の後の晩酌の会話も好きでした。失敗話や教わった酒造りのことを面白おかしく話してくれて。

 実家は熊本で酒蔵でしたが、今はお酒造りをしてなくて。6年前に仕事を辞めて、ここ、静岡の酒蔵を継ぎました。熊本の両親は、場所はどこでも、酒造りに関わってくれるのが嬉しい、自分たちがやってきたことを受け継いでくれるのが嬉しいって言ってくれて。いつか妻と一緒に、熊本や静岡にゆかりのあるお米や酵母、手法使って新しいお酒を造ってみたいですね。
2022年取材

一問一答萩原夫妻

  • 今日の朝食

    ヨーグルト、バナナ、シリアル、苺、プロテイン、牛乳、パン

  • 一緒に住んでいる人

    息子(10ヶ月)、祖母

  • 最近好きな作品

    コンドルズYouTube「武器よさらば」

  • 静岡を色に喩えると

    緑寄りの青